1.マイナンバー情報の廃棄について

 

 

マイナンバー情報の扱いについては、ついつい「収集」や「保管」ばかりに目が行きがちです。

しかし、「収集」や「保管」とともに、マイナンバー情報の「廃棄」についてもしっかり理解しておく必要があります。

マイナンバーのさまざまな制約のうち、重要なもののひとつに、「目的外の保管の禁止」というものがあります。

この制約は、会社で通常行っている資料の処理方法に逆行するものですので、皆さんが常日頃行っている書類等の保管の考え方について大幅に見直すきっかけになるかもしれません。

具体的に見ていきましょう。

どの企業でも,従業員に関わるさまざまな書類や・情報等をかなり長期間保管していると思います。例えば,他社とのFAX,メールのやりとりや従業員に関する人事情報や従業員とやり取りしたさまざまな申告書類等はそのまま廃棄することはなく,一定期間以上保管をしているのではないでしょうか。

これは,特に法定の各種申請書類等は法定の期間が過ぎても,将来的にその情報が必要になる可能性がある (例えば,訴訟等が起きた際に証拠書類として利用する等)ために,永年保管など長期間保管している企業が多いと聞きます。また,「OO関連の書類は保管期限××年」のように、期間で区切って保管しているのではないでしょうか。

ところが,マイナンバー制度では、「目的外の保管の禁止」という制約が適用されます。

その場合,法律で定められている期間以上に書類等を保管することは,「本来不必要な保管を行っている」ということになり、 「目的外の保管」に当たる可能性があります。

ですから、マイナンバーの記載のある書類・帳簿等は法定の期間保管後は必ず廃棄が必要となります。

この点は「企業はきちんとマイナンバーを保管しないといけない」ことから、「マイナンバーは廃棄をしてはいけない」、または「本人からの廃棄、削除の申し出がない限り一応保管しておかないといけない」といった誤解をしているケースが多いので、注意が必要です。

 

(参考・人事・労務に関する一般的な法定文書の保存期間)
文書名 起算日 根拠条文 年限
重要な人事に関する文書 法律等による保存年限はないが、文書の性格上、永久保存が必要と考えられるもの 永久
労働組合との協定書
従業員の身元保証書 作成日 身元保証二関スル法律1、2 5年
誓約書などの種類
雇用保険の被保険者に関する書類
(雇用保険被保険者資格取得等確認通知書、同転勤届受理通知書、同資格喪失確認通知書(離職証明書の事業主控)など)
完結の日
(その適用事業所を退職等した日。以下同じ)
雇用保険法施行規則143 4年
労働者名簿 死亡・退職・解雇の日 労働基準法109、労働基準法施行規則56 3年
賃金台帳
(国税通則法では7年保存を義務付け)
最後の記入をした日
雇入れ・解雇・退職に関する書類 退職・死亡の日
災害補償に関する書類 災害補償の終わった日
賃金のその他労働関係の重要書類
(労働時間を記録するタイムカード、残業命令書、残業報告書など)
完結の日
企画業務型裁量労働制についての労使委員会の決議事項の記録 有効期間の満了後 労働基準法施行規則24の2の3
労使委員会議事録 開催日 労働基準法施行規則24の2の4
労災保険に関する書類 完結の日 労働者災害補償保険法施行規則51
労働保険の徴収・納付等の関係書類 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則70
家内労働者帳簿 最後の記入日 家内労働法施行規則24
派遣元管理台帳 契約完了の日 労働者派遣事業法37
派遣先管理台帳 労働者保険事業法42
身体障害者であることを明らかにすることができる書類
(診断書など)
死亡・退職・解雇の日 障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則45
家内労働に関する帳簿 最後の記入日 家内労働法施行規則24
雇用保険に関する書類
(雇用保険被保険者関係届出事務等代理人選任・解任届など。労働保険の保険料の徴収等に関する法律または同施行規則4による書類は3年)
完結の日 雇用保険法施行規則143

つまりは、従来は保管期間超の保管をしていれば問題なかったのが,番号記載のある書類・帳簿については可及的に速やかな廃棄が必要になるのです。

例えば,従業員が退職した場合,法定の保存期間が過ぎた後には,その退職者に関するマイナンバー情報は確実に廃棄が必要になります。もし仮に,その後も退職者に関する情報を保管・管理したいのであれば,マイナンバーに関わる部分だけを削除する等の対応が必要になります。

また,帳簿によっては,次のケースも破棄の対象となります。例えば,扶養控除の申告書類のような退職しない方の分に関して,実際に使用した後に一定の保管期間が定められているケースもあります。この場合,退職 前の情報でも,破棄が必要となります。
このように,的確に番号を廃棄するために,従来の書類・帳簿の保管方法をあらためて見直すことが必要となります。例えば,今まで年度単位で関係書類を一括して保管・管理していた場合,個々の従業員単位での保管・管理などの対応策を検討する必要があります。

今までのまとめた管理から個々の従業員別に一つひとつ記録・保管・管理を行う必要があるのです。このことは,事務手順の大幅な見直しや保管・管理を確実に行うための新たなる仕組みやシステムを準備する等の対応が必要となることを意味します。

したがって、言葉でいうのは簡単ですが、実務に落とし込むにはそれなりの時間がかかりますので、きちんとした準備を行うのはかなり大変な作業であることを理解しておいてください。

2.従業員に関するマイナンバー情報の保管・管理の考え方の方向性

 

上記のことからわかることは、従業員に関するマイナンバーについては、取得、保管、廃棄ともに、早すぎず、遅すぎず、適切な時期に行う必要があります。

例えば、従業員を雇う際,面接時にマイナンバーを取得してはならず、実際に雇用契約を締結して税・社会保障の手続を行うまでは,マイナンバーを勝手に取得することはできません。

その後,正式に人社した時点でマイナンバーを申告してもらい,その後は適切な保管・管理を行う必要があります。

そしてその従業員が退職した場合には,法定の保管期間は,従来どおりきちんとした保管・管理が必要です。

ただし その期間が過ぎた後は,その方のマイナンバーに関する情報は確実に廃棄を行います。

この廃棄の考え方は,今までの業務フローと違った方向で行わないといけないので、他の書類との関係で面倒にはなりますが,きちんとした対応が必要です。