最近、海外在住者の日本の金融システムからの締め出しが始まった?ということで、海外在住者に悲鳴の声があがっているようです。

その原因は、

「海外在住者が、マイナンバーなしで日本の銀行への送金ができなくなっている」

ことです。

これは、全国銀行協会のWEBサイトにも記載がされていたのですが、少なくともいくつかの銀行では、法定調書作成のため、という理由で、海外からの送金の受け取りを行う際に、マイナンバーがないと送金の受領を拒否するようになっています。

現在のところ、番号法上海外送金を受領する際には銀行にマイナンバーの通知が必要というわけではないので、全部の銀行がマイナンバーがないと海外送金の受領を拒否するわけではなく、銀行によって対応はバラバラのようです。

しかしながら、現状、ほとんどの銀行口座はマイナンバーと紐ついておりません。

そうすると、ほとんどのケースでマイナンバーなしの口座に海外から送金すると、受領先の銀行側で受け取りを拒否することになります。

そして、これは他人間の送金だけでなく、本人名義の海外口座から日本の銀行口座に送金する場合も同じです。

これはどういうことかというと、海外に住む人(日本人も外国人も含む)が、日本に送金しようと思ってもできないということを意味します。

そうすると、日本の家族への仕送りや学費の送金を行ってもマイナンバーの提示を拒否したりすれば、送金の受領はできません。

ここで疑問なのは、

「では、海外在住の日本人はマイナンバーを取得すればいいじゃないか?そんなに難しいことじゃないでしょ?」

ということです。

しかしながら、マイナンバーは住民票コードをベースにして作られ、日本に住民票がある者に与えられますので、海外に住所があると、マイナンバーをそもそも発行できません

ですから、例えば長期海外在住の日本人Aさん(2015年10月にマイナンバーが付与されていない)が日本の自分の銀行口座に送金したものの、「マイナンバーを提示してください」といわれ、役所に「海外送金を受け取りたいからマイナンバーをすぐに発行してくれ、と頼んでも発行してくれない、よって、日本側で送金の受け取りができない、というという事態が起こります。

 

さらに、海外への送金もマイナンバーを提示しないとできなくなってきています。例えば、海外在住の個人事業主のAさんが日本のBという会社に物を販売して、代金を日本の銀行口座で日本円にて受け取るとしましょう。

この場合、Aさんは国内送金のため、海外送金を日本の銀行口座で受け取ることはできたとしても、マイナンバーがなければ、これを海外に送ることができなくなります。これでは、海外に在住するAさんにとっては、売上げ代金を受け取れず、死活問題になってしまいます。

近時はグローバル化の進展に伴い、海外でビジネスをしたり、会社に命じられて海外赴任をするケースも多くなっており、海外在住の日本人も増加しています。

当然、それに伴って、海外送金も増えてきています。

しかしながら、このようなシステムだと、海外在住者は今後日本の金融システムからシャットアウトされることになり、非常に困ったことになります。

日本は「INVEST JAPAN!」といって、日本に投資を呼び込もうとしている一方で、このような金融鎖国のようなことを行うと、金融のグローバル化に対応できなくなってしまいます。

ここで、これをもっと拡大して、国内送金にもマイナンバーが必須になったら、どうなるでしょうか?

こうなれば、もはや資金の動きはすべて当局が監視する事態になり、悪いことを考える者は、逆に正常な銀行取引などは行わず、ヤミ銀行、ヤミ取引が横行する社会になりかねません。

規制は厳しすぎると、守れないから守らない人が多くなってしまうので、マイナンバーの提示にしても、提示することで税金が安くなるとか、ポイントがつくとか、皆が喜んで使えるようなシステムにすることが必要でだと思います。

そして、銀行は法律で絶対にそこまでしないといけないわけでなくても、別途定める自主規制ルールには従わないといけません。

ですから、マイナンバーを提示する義務が法律上ないといったところで、自主規制ルールで全銀行がマイナンバーの提示を求めてきたら、それに従わなければ取引できません、嫌なら口座の解約でもどうぞ、以上、ということになってしまいます。つまり、絶対に融通はききません。

今後の展望ですが、日本の銀行は横並びですから、金融庁や全国銀行協会が「OOの取引には番号の提示を求める努力をすること」というルールを定めると、どこかの銀行だけが番号の提示をせずにその取引きを認めるようなことにはならないだろうと予測されます。

つまり、なし崩し的に、自主規制に基づく規制がスタンダードになります。そして、2018年までには、個別取引でのマイナンバーの取得がすすみ、かなりの銀行口座で「事実上の強制付番」により、銀行口座とマイナンバーは紐つけられているのではないでしょうか。

このように、「法律上義務でないから大丈夫」ということにならないのがマイナンバーの恐ろしいところです。

現状、海外送金とマイナンバーの問題の中で、海外在住者の日本の銀行口座への送金は非常に重要ですので、この問題を早急に解決することが必要かと思います。