マイナンバー制度と罰則

 

マイナンバーについては、少なくとも税や社会保険の情報と結びつきますので、住所や電話番号といった個人情報と比べ、より重要な情報となり、漏洩した場合のリスクは甚大なものとなります。

そのため、罰則はとても厳しいものとなっています。最高刑は「4年以下の懲役または200万以下の罰金または併科」は、個人情報保護法の罰則と比べると、格段に厳しいと言えるでしょう。

ここで最高刑の年数を「4年」にしたのには、深い意味があると思われます。

日本の法令上は、刑罰の懲役の期間が3年を超えると執行猶予がつけられないとされていますので、懲役4年になってしまえば、確実に実刑となるということです。マイナンバーの情報漏洩があり、それがあまりに悪質な事案であれば執行猶予のない実刑もあり得るということのメッセージだと理解すべきです。

また両罰規定とは、マイナンバー情報を漏洩した個人だけでなく、企業も刑罰を科されるということです。企業には懲役刑があるわけではありませんが、両罰規定があることによって重い罰金刑が科される可能性は十分考えられます。

刑事事件とならない場合でも、特定個人情報保護委員会という中立的な第三者委員会のようなものが設置され、勧告や指導が委員会を通じて行われます。

この勧告や指導が甘いものであれば、誰も費用をかけてまでマイナンバー漏洩対策をしなくなり、マイナンバーシステムは根幹から崩壊してしまいます。したがって、個人情報保護法の場合とは異なり、勧告や指導はかなり厳しいものになると予想されます。マイナンバーについてずさんな安全管理措置がなされている場合は、企業名を公表して是正を促すことは、頻繁に起こるでしょう。

そして企業名が公表されてしまうと、インターネットにより、その情報はあっという間に広がります。そのような形で社会からの信用を失うことに対するダメージは計り知れないものです。近時の大手企業の情報漏えい事件の例を見ても明らかな通り、漏えい発覚後ユーザーからの解約が相次ぐケースもある等、その損害額は甚大と言えますので、事前にある程度のコストをかけ、しっかりとしたマイナンバー対策をすることが重要です。

 

 

マイナンバー法と類似法令の罰則の比較
行為 法定刑 同種法律における類似既定の罰則
行政機関個人情報保護法・
独立行政法人等個人情報保護法
個人情報保護法 住民基本台帳法 その他
1 個人番号利用事務等に従事する者が、正当な理由なく、特定個人情報ファイルを提供 4年以下の懲役or
200万以下の罰金or 併科
2年以下の懲役or
100万以下の罰金
2 上記の者が、不正な利益を図る目的で、個人番号を提供又は盗用 3年以下の懲役or
150万以下の罰金or 併科
1年以下の懲役or
50万以下の罰金
2年以下の懲役or
100万以下の罰金
3 情報提供ネットワークシステムの事務に従事する者が、情報提供ネットワークシステムに関する秘密の漏洩又は盗用 同上 同上
4 人を欺き、人に暴行を加え、人を脅迫し、又は、財物の窃取、施設への侵入等により個人番号を取得 3年以下の懲役or
150万以下の罰金
(割賦販売法・
クレジット番号)
3年以下の懲役or
50万以下の罰金
5 国の機関の職員等が、職権を濫用して特定個人情報が記録された文書等を収集 2年以下の懲役or
100万以下の罰金
1年以下の懲役or
50万以下の罰金
6 委員会の委員等が、職務上知り得た秘密を漏洩又は盗用 同上 1年以下の懲役or
30万以下の罰金
7 委員会から命令を受けた者が、委員会の命令に違反 2年以下の懲役or
50万以下の罰金
6月以下の懲役or
30万以下の罰金
1年以下の懲役or
50万以下の罰金
8 委員会による検査等に際し、虚偽の報告、虚偽の資料提出をする、検査拒否等 1年以下の懲役or
50万以下の罰金
30万以下の罰金 30万以下の罰金
9 偽りその他不正の手段により個人番号カードを取得 6月以下の懲役or
50万以下の罰金
30万以下の罰金

(※内閣官房WEBサイトより抜粋)